理系

学科選びのトップで述べたように，理系の場合はどの学部・学科に入学するかによって，将来がかなり決まってしまいます。ですから，学部・学科の学びについてきちんとしたイメージを持っていないと，入学後に後悔することになります。「こんなはずじゃなかった」という気持ちになっている学生さんは各大学に結構います。我々，国立12大学はそういったミスマッチをなくすために，各大学の宣伝ではなく，それぞれの分野について正確な（そして公平な）情報を与えていこうという目的で，連合を結成しました。医学・薬学系は保健（看護）を除くと明確なイメージを描きやすいのですが，理学・工学・農学の中で特に工学と農学は学科名では中身がわからないというケースが多々あります。このサイトは，その疑問にお答えするために開設したサイトです。ゆっくりご覧になってください。必ずや，皆さんの役に立つと思います。（大変残念なことに，国立12大学には歯学部は存在していません。ですから，その説明は省略しています。）

理工農の違い

国立大学の中では，定員の5割以上を占める分野です。（公立大学では，理系の中ではむしろ医学・薬学系の割合が大きくなっています。）　ですから，このサイトをご覧になっている方にとっては一番関心の大きな分野だと思います。金沢大学のように，理学部と工学部が融合した理工学域になっているケースや，信州大学の繊維学部のように理学・工学・農学の融合した学部になっていることもあります。このサイトでは，あくまで理学，工学，農学という分野に基づいて見ていこうと思います。

理学と工学の違いは，研究に対する姿勢の違いです。
理学部：「真理の探究」　基礎研究がベースで，新しい原理（真理）を見つけ出す。
工学部：「意思の実現」　英語にすると Realize Your WILL!! でしょうか。

　WILLはDreamとは違います。やりたいことをかなえるためには，いかなる努力も惜しまないという姿勢が"WILL"です。その気持ちをもって入学してくれれば，卒業までにはかなえてあげます，というのが工学部です。いくら"WILL"があっても，かなわないかもしれないのが理学部です。研究姿勢が根本的に違う部分があります。

英英辞典でのWILLとDREAMの違いです。
WILL : someone's determination to do what is necessary to achieve what they want
Dream : something good that you hope you will have or achieve in the future
雰囲気の違いがよくわかると思います。

　燃料電池というものをご存じでしょう。水素と酸素が水になるという反応を利用した電池で，二酸化炭素を発生しない環境に優しい発電です。最近でこそ，色々と使われるようになってきましたが，その基礎原理は120年以上前に（理学で）見いだされています。でも，実際に使われたのは40数年前のアポロ（月に行った最初の宇宙船です）でした。宇宙空間という過酷な条件の下で効率よく作動する電池は，これしかなかった（すいません言い過ぎですが・・）わけです。でも，すぐに実用化はされませんでした。ここ20年ほどの間に環境に優しい実用電池として研究が進められてきました。理学は50年から100年先を見つめた研究を行っています。（だから，基礎研究と言われるわけですし，真理の探究になるわけです。管理人も理学部出身ですが，自分の見つけた原理が生きている間に認められて・・ノーベル賞がとれれば・・というのが心の中に常にあります・・）　工学では，それは許されません。今，問題になっていることを解決するのが任務です。極論かもしれませんが，理学の人たちが見つけ出した基礎原理で役に立ちそうなものを選んで，使えるように考えていくのが工学です。ですから5年から10年のスパンで研究は進められます。理学は一途に突き進んでいくタイプの人が多いですが，工学では必要とあれば選んだ原理を捨てて乗り換えるくらいの柔軟性が必要です。農学も対象は違いますが，工学とこの点では似ています。

　実際に，就職先も理工農でかなり異なります。工学部はメーカー（製造業）が中心と言うことは十分わかっていると思いますが，理学部は高校（中学）の先生が結構多く，農学部は公務員が多くなっています。文系と同様に，名古屋大学の学部＋大学院の３年間の就職先の上位を下の表に示します。農学部は食品系が多いのですが，それ以上に公務員が多いと言うことに驚くかもしれません。どちらにしても，工学部はメーカーが主体でかなりの数が入っていますが，理学部や農学部では5名以下の就職先が多くなっています。この辺が，就職に関しての大きな違いかもしれません。